ウインナークラブ club awa-dayori osusume

ドイツ兵が伝えたソーセージ

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 いろいろの方から、なぜ古いソーセージの復元を考えたのかという質問を受けます。大阪から徳島の石井町のウインナークラブに移ってきたとき、「板東収容所」のことを知りました。仕事柄すぐにドイツのソーセージが思い浮かびましたが、なぜ徳島にその伝統が残っていないのか不思議でしたし、もし残っていないのなら自分で復元してみたいと考えました。

 ドイツ館に問い合わせたところ、渡されたのは1918年3月に俘虜が開いた「美術工芸展覧会」のパンフレットと、船本宇太郎さんと松本清一さんが書いた「ドイツ俘虜の家畜管理と酪農の草分時代について」という小冊子だけでした。

 この展覧会の資料には、出品された15種類ほどのソーセージなどの名が並んでおり、試訳も付けてもらったのですが、例えば「詰め物をした子豚、飾りがしてある」などとあるだけで、実際にどのようにすれば復元できるのかまったく判りませんでした。

 ところが今年になってドイツ館から、習志野の飯田吉英『豚と食肉加工の回想』という資料が手に入ったとの連絡がありました。やっとレシピらしいものが見つかり色めきたちましたが、読んでみると判らないことだらけでした。しかしこのあたりを手がかりにしなければ復元は不可能と考え、丁寧に解読していきました。

 弾みになったのは、大阪の「食肉加工マイスター」の資格を持つ小林武治郎さんと知り合ったことです。手持ちの資料をお目にかけると大変興味をもたれ、徳島にもお出でいただきました。いろいろ検討した結果、10月1日のドイツ館での「全国フォーラム」でのデビューをめざして取り組むことになりました。

 小林さんも、「飾りがしてある」とはどういうことかと首をひねっておりましたが、再度ドイツに行かれた際に、修業なさった「バイエルン食肉学校」で古い文献を見つけてくれました。そこには、「飾りの付いた豚」の挿絵が載っていたのです。

 最終段階に入って、習志野収容所時代に使われていたソーセージ作りの仕様書の原書が復刻されるとの情報が入りました。1902年に刊行された Die internationale Wurst-und Fleischwaren-Fabrikation (『国際ソーセージ・食肉製品工程』)で、習志野にいたカール・ヤーンがもっていたものです。当時のソーセージ作りの基本を記したもので、当然板東の職人もこれに従っていたと思われます。復刻は麻布大学の坂田亮一教授の手によるものですが、ここにははきりした「飾りの付いた豚」やその頭の挿絵が載っています。これで必要な情報は、ほぼすべて揃いました。

 製造に当たって、道具も当時と同じものを使いたいと思いました。その頃はほとんど手作業で、すべてが粗挽きタイプでした。「燻煙」も機械化されたスモークハウスではなく、直下型のを使っておりました。幸い昨年、「国の登録文化財」に指定された「船本牧舎」に、当時のものが残っておりました。責重な設備を貸してくださった船本さんに感謝しつつ、8時間かけて作業を終えました。

 このようにたくさんの方のご協力を得て、復元が成功しました。今後は鳴門市や徳島県の観光資源の一つとして、活かしていければと思っています。

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