ウインナークラブ誕生物語history

一頭単位で食べないと、本当の産直はできない!

「一頭単位で食べないと、養豚家との本当の産直は成立しない」という、当たり前といえば当然至極な考え方に納得することは誰にでもできます。しかし一頭の豚からは50kg以上の豚肉が取れます。一頭単位では誰も食べきれません。ではどうするのか。近所の人たちと分け合うしかありません。

豚肉文化に乏しい関西圏で「やってみようよ!」と周りの人に呼びかけた人たちがいました。大阪の泉北生協(現・生協エスコープ大阪)の組合員さんたちでした。

豚を知ることから彼女たちは活動を開始しました。枝肉(一頭を縦半分に割ったもの)を目の前で解体して、部位の成り立ちを学びました。ブロック肉を使い切る料理講習会を、毎日のように開催して回りました。

当時、扱っていた豚肉は「沖縄産の豚」という情報以外に、品種も飼料も投薬記録も生産者も何も判っていませんでした。いわば素性の不確かな豚を、豚肉をほとんど食べない関西の消費者に向かって、しかもブロック肉で供給するという、無謀ともいえる取り組みでした。

その頃市場に出回っていた豚肉は、生産効率を最優先するために抗生物質漬けの苦い肉が問題となり、養豚業界と流通経路の曖昧さが不透明な価格を生み出していました。「一頭単位の消費」は、市場の豚肉に「ノー!」という異議申し立ての声を突きつけるだけではなく、共同して消費する力をみんなが実感できる取り組みでした。

消費する力をバックに生産者と出会いました!

約2年間の活動は、わずか7千人の生協で月間78頭の豚を消費まで到達し、徳島県の熱心な養豚家、(有)石井養豚センターとの出会いに結びつきました。

(有)石井養豚センターは、近藤功氏とその息子3名(うち2名は獣医)が養豚していましたが、消費者である生協組合員の「健康に育った豚を食べたい!」という熱い思いに感動し、その夢をとことん実現して見せることに情熱を注ぎました。そのために、かつて(有)石井養豚センターが飼育していた中ヨークシャー種をベースにしたオリジナル豚の品種(LYD)を作り出しました。

(株)ウインナークラブの誕生!

その後、約6年間に及ぶ産直豚の一頭買い活動によって、月に200頭まで消費の輪が広がりました。「自前の解体処理によって、肉質評価を養豚現場に反映したい」「より直接的な流通を作りたい」との願いが強まり、生協と(有)石井養豚センター(近藤家)が共同出資して、オリジナル豚だけの解体処理・精肉加工場を創ったのが1988年9月20日。ついに(株)ウインナークラブの誕生です。

会社設立当初は、豚枝肉を脱骨し、ブロック肉に切り分け、ミンチを挽き、真空包装して出荷するだけでした。在庫はゼロという素晴らしい経営形態で、他の豚が混じることなど、絶対に有り得ない流通を実現しました。

その後、スライス肉供給の要望が強まり、流通上の問題から冷凍で届けることになりました。

さらに飛び切り美味しい安全なオリジナル品種を原料としたハム・ソーセージ開発への要望が高まりました。市場の多くのハム・ソーセージは、食品添加物の塊と言ってもよい状態であり、健康な食生活を願う消費者の願いは当然のことでした。

世界品質のハム・ソーセージの誕生!

当社が製造するハム・ソーセージ類のレシピは、ドイツのマイスター資格を取得したダンカース・シェフケの指導によって作成されたものです。ダンカース・シェフケは1949年生まれのオランダ人。オランダ、ドイツ、フランス、イスラエルで食肉・食肉加工について学び、1970年にオランダの国家資格を、ついで1983年にドイツのマイスター称号を取得。1985年に来日。当社はアドバイザリースタッフとしてダンカース・シェフケから1992年から2004年まで指導を受けました。

ヨーロッパの食肉職人にとって権威ある大会<スラバクト・コンテスト>(オランダ・ユトレヒト市で3年に一回開催される)に94年、97年と連続出品し、味、形、技術など50点満点の「スターゴールド賞」をはじめ、金賞、銀賞を数多く受賞し、当社のハム・ソーセージ製造の技術レベルが世界に通用する品質であることが確かめられました。

高まる需要に対して、当社は1999年工場を新設・拡充し、ハム・ソーセージ製造とともに、惣菜品の製造も開始しました。また微生物検査室の設備も充実させました。

映画「バルトの楽園」で使用された“復元ソーセージ”も、当社の技術力によって再現が可能になりました。

毎日食べても飽きないハム・ソーセージを目指して!

(株)ウインナークラブのハム・ソーセージは、ダンカース・シェフケのレシピをベースにしながら、塩分濃度等に工夫を加え、また嗜好的要素も採り入れながら、毎日食べても飽きの来ない本物のハム・ソーセージ製造を目指しています。

健康に育てた豚を食べて、健康で元気な生活を!

(有)石井養豚センターでは、幻の豚といわれる中ヨークシャー種をベースに、その後オリジナル品種に改良を加えました。中ヨークシャーのよさを生かしながら、より健康に育つこと、品質にバラつきが生じないこと、価格をできるだけ抑えること(中ヨークシャー純粋種の場合は2倍以上の価格になります)などを目的に、WYWDという品種を作り上げました。また飼い方、豚舎、飼料などでも、健康に育てることを最優先させた養豚を行っています。(詳しくは「オリジナル豚」をご覧ください。)

(株)ウインナークラブのハム、ソーセージは、食品添加物を基本的には使用していません。その理由は、消費者が市場の養豚と豚肉の流通・販売のあり方に異議申し立てを行い、自らの消費行動を強い意志をもって変革し、それに養豚生産者が根底から共感して渾身の力で応えた「豚の一頭買い活動」の取り組みの中で、必然的に創設されたことが原点だからです。したがって当社は消費者と生産者の協働のステージとして機能し、消費者と生産者の共通の価値観を実現することが、当社の根本的な企業ポリシーです。

今後も安心して美味しい豚肉をお届けするための最大の課題は、飼料です。豚だけではなく、畜産物全体の問題です。(株)ウインナークラブと(有)石井養豚センターは、飼料の国内自給に向けて取り組んでいます。

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